杉村春子という女優がいた。
彼女の着物姿を、老年の女性たちが憧れていた。
実にゆったりと着ている。
特に襟元はぐさぐさだ。
私も77才になって、やっとこのぐさぐさ衿に着付ける理由が分かるようになりました。
老婆になると、首はしわやたるみでみっともなくなる。
太っているひとはそうでもないのだが、痩せていると胸も貧弱だ。
若い頃のように後ろを抜き、きちんと衿を合わせると、胸や首まわりのみっともなさが目立ち、自己嫌悪に陥る。
そこで、あえてきちんとは着付けず、いくらかでもみっともなさを目立たせないように、ぐさぐさに着るのです。
若い頃は力みの入った着付でもいいが年を取ったら、力を抜く。
これ、仕事や生き方でも同じなのです。
世阿弥は「時分の華」という言葉で、ひとは年代によって華を作れる、若く美しい時代だけが華ではない、と教えています。
Posted at 14:38